前習えって本当に必要?~スワジランドで教育実習~
僕の通っている学校には図書室があります。
日本の学校には当たり前の様に図書館がありますが、 スワジランドの学校には図書館がないことが多いです。
ちなみに、アメリカの図書室はこんな感じでした。
そして、スワジランドの学校の図書館はこんな感じです。
小部屋の1つ分しかありません。
生徒たちが借りれる本の数も1週間に1冊と限られています。
小さい頃にどれだけ多くの本を読むかは、のちの「読み聞き」 の能力に深く関わってきます。
これでは、「本が周りにたくさんある環境」で育った子どもと「本が周りにあまりない環境」で育った子どもの「 読み書き」の能力に差が出ることは必然です。
「生まれた環境によって身につく能力が異なってしまう」 という現実を再認識しました。
前習え
今日は3年生にサッカーを教えました。
スワジランドでサッカーは人気のあるスポーツの1つです。
ボール1つさえあれば楽しめるスポーツは、 貧しい国では大衆スポーツになりやすいのだと思います。
授業を始める前には準備体操を行いました。
スワジランドの先生はよく、子供達を円の形に立たせて、 準備体操をします。
しかし、子供たちがうまく円を作れないという光景を良く見ました。
手を繋いできれいな円を作ろうとしても、「 手を繋ぐならこの子がいい」「手を引っ張られて痛い」 など問題が起きます。
それを見ていた僕は、 子供達を2列に並ばせて準備体操をすることにしました。
しかし、2列に並んでも子供達の感覚が近すぎます。
そこで、登場するのが「前習え」です!
前習えをすると、あら不思議、
子供達の間隔がちょうど良くなり、 体操をしてもお互いに当たることのない間隔を一瞬で作ることができ ます。
「前習え」は、「円を作って立つ」と違って、簡単且つ効果的です。
「子供達がちょうど前後の子供に当たらない安全な陣形を最速で簡単に作る方法」
これが「前習え」なんなだなと初めて理解しました。
そして、体育の授業で「前習え」と同じくらい登場する「体育座り」。
体育座りは、膝を手で抱えて手を足の前で組みます。
「前を向いて座っている時に最も姿勢が良くなり、 そして子供たちが手遊びしてしまうのを防ぐ姿勢」
これが「体育座り」。
「前習えや体育座りをなぜ子供に覚えさせなきゃいけないかわからない。」
と言われたのは1年前の夏。
確かにな、ってその時思いました。
「前習え」なんて正直やる意味があるのか?と思ってました。
そして、今の学校には前習えなどの慣習がありません。
しかし、今なら「前習え」や「体育座り」の有用性が理解できます。
これらは、「軍事訓練」などの名残と批判されますが、今も多くの先生が使ってるのは、それがやはり優れた方法であるからというのも1つの理由だと思います。
そして、背の順。
背の順で並ばなきゃいけないのは、単純に大きい人が前にいると前が見えないからですね。
前が見えないと生徒たちはジャンプしたり、横から覗こうとして、 列を崩さなければいけない。
こうやって1つ1つ考えてみると、単純な指示やほんの動作にも実は一つ一つ意味があったんだなと納得しました。
そして、大事なのは今まで受け継がれてきた慣習などをただ実行するのでなく、それが「なぜ重要なのかを考えて理解すること」
スワジランドにいて新しい発見をした瞬間でした。
そんなことを考えて2年生の教室に行ったら、 ちょうど校長先生がきて、
「ちょうどよかった。今から2年生の担任の先生と話があるから、 教室を見ていてくれる?」
と言われて、2年生の教室をみることに。
校長先生には、どんな授業をしても良い、 と言われたので日本のことを話すことに。
まずは、日本の場所から。
世界地図を黒板に書かなければいけません。
「日本はどこでしょう?」「スワジランドはどこでしょう?」
などと質問しました。
多くの2年生はまだ、「スワジランドが世界のどこに位置しているか」を知りません。笑
「スワジランドはここにあるんだよ」と話していたら、先生が帰ってきました。
そして、先生はなぜか荷物をまとめ始めました。
そして、自分の荷物を持つと僕と生徒に向かって
「俺は家に帰る。クビになった。じゃあな、元気でな。」
と言って去って行きました。
~続く~